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予選大会におけるソフトウェア構成と30km/s速度制限を突破する方法

はじめに

本記事では、AIチャレンジ2024予選時におけるチーム Roborovsky のソフトウェア構成を紹介します。 また、本来の速度制限である 30km/h を突破する方法についても言及します。

Multi-Purpose-MPC

Roborovsky の車両制御の中核は OSS である Multi-Purpose-MPC が担っています。 車両のモデル情報、コースの壁情報、目標経路、障害物情報を与えれば、モデル予測制御により目標並進速度、目標舵角を計算してくれます。 AIチャレンジ2024の競技にぴったりですね!

参考GIF(出典:https://github.com/matssteinweg/Multi-Purpose-MPC

とはいえ、本家の実装のままでは本競技に適用できません。Roborovsky ではここに機能追加・修正・ROS 2 ノード化などを施して使用しています。カスタム内容の詳細については、また別の機会に記事にします。

予選のソフトウェア構成

ノードグラフの主要な部分を抜粋して下図に示します。登場するのは mpc_controller ノードのみで、こちらが Multi-Purpose-MPC 改良版の ROS 2 ノードです。

mpc_controller の処理を要約すると次の通りです。

この構成であれば、私達の環境ではコースの6周完走タイムが 4分10秒 前後になることを確認しています。経路を工夫すればもう少しタイムを短縮できるかもしれません。

30km/h 速度制限の突破について

AIチャレンジ 2024 の予選シミュレーションでは、AWSIM側で速度制限 30km/h が設定されています。この制限速度はカートの仕様に対してやや控えめな印象であり、急カーブを含めて常に最大速度 30km/h を維持して完走することが可能です。したがって、最終的な上位争いのポイントはコース取りや障害物回避のスムーズさ、そして障害物配置ガチャの引きの強さ、あたりに収束するものと思われます。この場合、トップ争いのタイムは 04:00-04:10 のあたりと予想されます。 しかしながら、実際には 30km/h の速度制限を突破する方法が存在しました。

速度制限の突破はルール上許されるか?

速度制限の突破は、予選においては許容されるものと認識しています。その根拠は、大会公式Slack にて運営の方より、30km/h を超える速度が出ている提出を許容する旨が書き込まれた点にあります。

運営の皆様は 30km/h 突破を想定されていなかったものと推察しますが、30km/h を超えるチームが複数出てきてしまった以上、提出履歴をチェック・修正してリセットすることは困難と判断されたものと思われます。

とはいえ 2024/08/24 現在、速度制限を突破しているのは一部のチームに限られます。 また、現予選環境においては、速度制限突破を使用せずにランキング上位に食い込むことは事実上難しい状況になっていると考えます。 これは、大会運営の皆様の当初の意図から外れる状況であるものと思われるため、 恐縮ではありますが、公平性の観点からチーム Roborovsky が発見した速度制限の突破方法をここに記載しておきます。 (また、今後のAWSIM 等のデバッグに役立つ情報であるのではとも考えております)

速度制限の突破方法

私達が発見した速度制限の突破方法は簡単です。次の2つを満たせば、30km/h の制限速度を無視した大きな加速度が発生しやすいことが確認されています。私達はこれをブースト加速と勝手に呼んでいます。

これらの条件を満たしていると、稀にですが、ごく短い期間指令した大きな加速度指令が車体制御に反映されてしまうようで、一瞬急加速するような挙動が生じ、この時に速度上限を突破することができてしまいます。 指令加速度の値は大きすぎると車両が宙に飛んでしまいます。適切な値を探してみてください。システムのアーキテクチャやコントローラによっても、加速度や指令レートの適切な値は変わると思われます。

なお、あくまでこれらはブースト加速が「発生しやすい」方法であり、発生タイミングを完全にハンドリングする方法は見つけられていません。

速度制限の突破は乗りこなすのが難しい

速度制限が突破した場合、カーブ時に速度が大きすぎて横転してしまうことがあります。ブースト加速のタイミングはハンドリングできないことも相まって、カートを「乗りこなす」難易度が上がった印象です。この対処には工夫のしがいがあり、個人的には競技としての面白さが増したとポジティブに捉えています。

実機では非常に危険(そもそも実現不可能)と思いますが…。

さいごに

本記事ではチーム Roborovsky のソフトウェア構成と、速度制限 30km/h を突破する方法をご紹介しました。参考になれば嬉しいです。

そして、大会運営の皆様には、企画当初のご想定から外れていると思われる内容を記載することをお詫び申し上げます。あくまで公平性の向上を目的とした記事としてご理解いただけると幸いです。改めて、自動運転AIチャレンジの企画、運営に感謝申し上げます。


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